PROJECT STORY 02肥料プラント建設プロジェクト
トルクメニスタン( ガラボガズ )

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トルクメニスタンの未来を担う大型肥料プラント建設プロジェクト

カスピ海の東岸に位置するトルクメニスタンは、世界第4位の埋蔵量を誇る天然ガスの輸出により順調な経済成長を遂げている。また、天然ガスの付加価値を高めた製品の輸出・販売にも積極的で、天然ガスを原材料とする大型肥料プラントの建設も進めている。
三菱商事マシナリは、この肥料プラント建設の契約履行業務に深く携わっている。

中央アジア最大を誇る
アンモニア・尿素肥料製造プラント

同プラントは、商談開始から約5年の歳月を費やし、2014年9月に三菱商事とトルコ企業が共同でEPCC契約を締結した大型プロジェクトです。EPCC契約とは、Engineering、Procurement、Construction、Commissioningの頭文字を取ったもので、設計から調達、建設、試運転までを一貫して請け負う契約のことを指します。その受注総額は約13億米ドルで、アンモニア2,000トン/日、尿素3,500トン/日の生産能力を誇る大型肥料プラントとして、2018年の生産開始が予定されています。
同プラントの完工に向けて、当社では6名の社員を中心に契約履行業務を進めています。その業務内容は、船積書類の作成、税関への申告、代金回収をはじめ、顧客・メーカーとの交渉、現地許認可関連に関わる関連省庁との折衝、本プロジェクトへの融資銀行との折衝、渡航する技術者のVISAの手配・管理等、非常に多岐にわたります。

機器の出荷は1,000回以上、
長距離・長期間に及ぶ輸送

今回の大型肥料プラントは、カスピ海に面する都市ガラボガズに建設されます。化学プラントであることから生態系への影響も考慮し、カスピ海の環境保全が重要な検討事項に挙げられました。そこで、設計段階において、排水処理システムに関する綿密な打合せが連日のように実施されたのです。
プラント建設に必要となる機器は、日本をはじめ、アジア、欧州、米州の各国から1,000回以上にも分けて出荷されます。日本から出荷される積荷は、スエズ運河 ⇒ 地中海 ⇒ 黒海を経て、ボルガドン運河(黒海とカスピ海をつなぐ運河)を通り、ようやくトルクメニスタンの港に至るのです。この輸送は3ヶ月にもわたります。
現地では2015年から基礎工事が開始されており、現在は、各国から届いた機器の据付工事及び単体試運転が行われています。当社の社員も現地に赴き、渡航する技術者のサポート業務や、トルクメニスタンの関連政府機関から許認可を取得する業務等に対応しているのです。

利害や文化の違い、
それを乗り越える数々の交渉

今回のプロジェクトは、機器の製造から輸送、建設、試運転までを一貫して請け負うEPCC契約となるため、機器の製造中に地震が発生する、輸送中に火事や座礁が発生する等、数々のトラブルにも見舞われました。また、その国特有の規制により追加手続が発生し、スケジュールの遅延対応に追われることもありました。
大型プロジェクトには、多くの企業、人々が関わるため、それぞれの利害や立場、文化の違いから予想外の意見対立が生じてしまうケースも少なくありません。以前、同プロジェクトに従事している社員がトルクメニスタンに出張して打合せを行った時、議論が紛糾してしまう場面がありました。顧客要望だけでなくその国の商慣習等、様々な要素も考慮しながら粘り強く議論を続けた末、ようやく合意に達することができましたが、その直後、相手は机の中からウィスキーの小瓶を取り出し、「議論の中では色々あったが、この酒を飲んだら、今後はお互い気持ちよく、合意したことを進めていこう」という言葉をかけて貰えたのです。昼間にも関わらず乾杯を交わした経験は、思い出深いエピソードとして今でも心に刻まれている、と当時の担当者は振り返ります。
この経験は、利害が対立する問題が生じても対面する相手に敬意を持って接し、関係を大事にしていくことの大切さを学ぶ非常に良い機会となりました。

雇用の創出、輸出の拡大、
国の未来を担う大型プロジェクト

現在、トルクメニスタンでは、肥料プラントの建設にあたって現地には約3,500名が携わっています。本プラント完工後も、約1,000名が操業のために働く予定であり、現地雇用の創出に本プロジェクトは大きな役割を果たしています。更に、このプラントで生産された肥料は世界中に販売され、トルクメニスタンの外貨獲得に貢献していくことも見込まれます。同国の人口が約540万人であることを考えれば、肥料プラントの建設が「いかに意義のある国家プロジェクトであるか」は容易に想像できるでしょう。もちろん、その完工に向けて当社が果たす役割は非常に大きく、また責任も重大です。
当社に課せられた業務の中には、船積書類の作成や技術者の出張手配等、地味だと思われがちな仕事も少なくありません。しかし、その一つ一つがプラント建設を推進していく石積みとなり、そして最終的に大きなプラントの操業へとつながっていくのです。このことを肝に銘じながら、当社は今日も着実な契約履行に向け汗を流し続けています。